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2009年04月21日
蛍の懺悔 「北の国から」より
富良野には、全然帰ってなかった。
時々、富良野から電話があるから
父さんの声だけはちょくちょく聞いていた。
でも、富良野には帰ってなかった。
帰ってはいなかったけど
富良野は通ってた。
父さんには絶対言えないことだけど
富良野の駅には何度も立っていた。
駅にはいたけど、いつもホームだった。
改札口を、私は出なかった。
旭川から帯広に行くには
どうしても富良野で乗り換えなくちゃならない。
私には帯広に行く目的があった。
帯広には、一昨年から勇ちゃんが住んでた。
勇ちゃんは一昨年、帯広にある帯広畜産大学に入った。
だから私は勉強の合間を縫い
勇ちゃんに会うために帯広に通った。
富良野の駅で乗り換えるときは
いつも緊張し、心が痛んだ。
誰かに会うかもしれなかったし
何より父さんがそこにいるのに
降りない自分が後ろめたかった。
罪の意識に、いつも苛まれた。
それでも私はホームに潜み
あるいは客席の隅に縮こまって
改札口を出ることをしなかった。
そうして列車が富良野盆地を離れ
狩勝峠を越えて十勝に入ると
いつも大きく、ため息をついたんだ。
帯広の街が近づくにつれて
私の罪の意識は薄れた。
それは私の、解放の時だった。
帯広には、私の青春が待ってた。
(「北の国から '92巣立ち」より)
投稿者 mediaholic : 2009年04月21日 01:40